3.その人見知りは自ら道を作れることを知った。

このブログは、とんでもない田舎に生を受けた人見知りの少年が、やがてコミュ力お化けになり年収3,000万超えを果たす迄の軌跡である。

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少年は小学生になっていた。
当時の通信表を見る限り、協調性や積極性は皆無だった。
運動は苦手だったが、勉強だけは抜群に出来ていた。

そんな少年は、この日も困っていた。
そう、「クラスでの決め事をする日」である。

掃除当番や様々な係は全てこの様式により決められていた。
勿論だが、これには大きな欠点がある。
(筆者が人見知りなだけだったが)

「声の大きい人」

この人が即座に挙手し、発言し、決まってしまうのだ。
そして次に声の大きい人、その次に…。

こうして声を上げることが出来ない少年は、自分の意思とは関係無く、実に様々な係を請け負ってきた。
なかには「勉強が出来ない人に放課後つきっきりで教える係」なんていうものもあった。
実に不愉快であった。

皆が遊んでいる間に必死に勉強をしたのだ。
何故、そんな自分が鼻水を垂らした阿呆相手に勉強を教えなければならないのか。
(これについては今でも教員の職務怠慢だと思っている)

そんな日々が続きに続き、少年は高学年になっていた。
人見知りは治っていなかったが、少年は気付いていた。

「このままだと、自分はどんなに勉強しようが誰かの一声で道が決まってしまう」

それだけは阻止しなければならない。
だが、阻止の方法は一つ、声を上げることだ。
それが出来るのであれば初めからやっている。

少年はこの堂々巡りを始終繰り返していた。

月日が流れ、少年は最高学年となっていた。
またも「クラスでの決め事をする日」がやってきた。

少年はこの日、自分の人生がここで終わるのではないかと一人震えていた。
声を上げ、無視されるかもしれない。
そしてもう一つ、このまま声を上げることが出来なければ、最低学年として中学生になった途端にまた数年の我慢となってしまう。
最高学年である以上、敵は教員と同級生しかいない。
(敵ではないのだが、少年にはそう見えていた)
これが中学生になると「先輩」というカテゴリーの敵がまた湧いてくる。
こうなってしまうとバッドエンドだ。

そんな風に少年が藻掻いていた矢先、その儀式は始まった。
「意見のある人ー?」
ここだ、もうここで一気に行くしかない。

この時ほどの決意をしたことがあろうか。

少年は可能な限り大きな声で、力の限り高く挙手をした。

実際には、とんでもなく掠れた裏声で、手は挙がったもののその手の先は頭頂部より低かったことを記憶している。
「やってしまった…」
少年の目の前は突如暗闇に包まれた。
「もう終わったんだ…自分の人生はもう一生変わらないんだ…」
少年がまた心の殻を厚く強固にしようとしたその時。

「ん?誰?お、どうぞ。」

突如与えられた発言権。
教員は人見知りの少年の僅かな挙動を視界に捉えていた。

好機再来。

その時自分が何を言ったかは正直覚えてはいない。
一生懸命、小さな口をパクパクさせながら、およそ文法も無視した拙い発言をしたのだろうとは思う。

「だってさ、皆さんどうですかー?」
「いいでーす!」

実にあっけなく少年の意見は通った。
少年は歓喜とも違う変な高揚を感じていた。
それと同時に、今までは何だったのだと混乱した。

少年は気付いたのだ。
この世の中は自ら変える事が出来るのだと。
自らが動かなければ変わらないのだと。

少年はこの日、「極度」が取れた「人見知り」へと変貌した。

続く

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